共存できる働き方!フレックスタイム制度の導入効果

育児や介護、副業など、従業員のライフスタイルがますます多様化する中で、画一的な勤務時間制度だけでは人材の定着や活躍を十分に支えきれない時代になっています。特に働くママにとっては、保育園の送迎や子どもの急な体調不良など、時間の制約がキャリア継続の大きな壁となるケースが少なくありません。

こうした課題に対する有効な打ち手の一つとして、フレックスタイム制度は、個々の事情に配慮しながら生産性を高められる制度として再評価されています。制度そのものは以前から存在していましたが、働き方改革やリモートワークの普及と相まって、今あらためて導入を検討する企業が増えている状況です。

一方で、「形だけ導入しても機能しない」「現場が混乱するのでは」と不安を抱く管理職の方も多いのではないでしょうか。本記事では、フレックスタイム制度の基本から導入効果、具体的な運用のポイントまでを実践的な視点で整理してまとめております

目次

フレックスタイム制度で実現できる働き方の全体像

フレックスタイム制度とは、一定期間の総労働時間を満たすことを条件に、始業・終業時刻を従業員が自律的に調整できる制度です。コアタイムを設けるケースもあれば、完全フレックスとする企業もあり、設計次第で柔軟性の度合いは大きく変わります。

働く時間を「管理されるもの」から「選べるもの」へ転換することが、この制度の本質といえます。これにより、育児や介護と仕事の両立だけでなく、通勤ラッシュの回避や集中できる時間帯の活用など、業務効率の向上にもつながるとされています。

フレックスタイム制度の基本的な仕組み

多くの企業では、1か月などの清算期間内で所定労働時間を満たすことを条件として運用されます。コアタイムを10時から15時に設定し、それ以外の時間帯を自由とする形式が一般的です。

コアタイム 必ず勤務する時間帯
フレキシブルタイム 出退勤を自由に調整できる時間帯
清算期間 所定労働時間を満たす管理単位

働くママにとっての具体的なメリット

  • 保育園の送迎時間に合わせた出退勤が可能
  • 子どもの体調不良時に時間単位で調整できる
  • 無理な残業を避け、家庭と仕事の両立がしやすい

これらのメリットは、単なる利便性にとどまらず、仕事への安心感やエンゲージメント向上にも直結します。

企業側に生まれる効果

フレックスタイム制度は、従業員満足度の向上だけでなく、離職率の低下や採用力の強化にも寄与すると指摘されています。特にワーキングマザー層の定着は、育成コストの回収という観点でも重要なテーマです。

導入が進まない企業に共通する課題と背景

フレックスタイム制度は多くの利点がある一方で、導入や運用がうまく進まない企業も少なくありません。そこには、制度設計だけでは解消できない組織構造やマネジメント上の課題が潜んでいます。

属人化した業務による時間調整の難しさ

特定の担当者に業務が集中している状態では、フレキシブルな働き方をしたくても周囲にしわ寄せが生じやすくなります。その結果、「結局その人だけ遅くまで残る」という状況が生まれ、制度が形骸化するケースが見受けられます。

評価制度が成果ではなく時間に依存している

長時間働くことが評価につながる文化が残っている場合、早く帰ることに心理的な抵抗を感じる従業員が少なくありません。これは、制度と評価制度の不整合という根本的な問題によるものです。

「フレックスはあるけれど、結局みんな固定時間で働いています」

このような声が上がる背景には、“使ってはいけない空気”を生み出す職場風土があると考えられます。

マネジメント層の不安とコミュニケーション不足

「誰がいつ働いているのか分からない」「管理が難しくなるのでは」といった不安から、管理職が消極的になるケースもあります。しかしその多くは、制度への理解不足や情報共有の設計不足が原因とされています。

フレックスタイム制度を機能させる具体的な運用ポイント

フレックスタイム制度を単なる福利厚生で終わらせず、組織成長につなげるためには、運用面での工夫が不可欠です。ここでは、実際に効果を上げている企業の共通点を踏まえたポイントをご紹介します。

業務の見える化とチーム設計の見直し

まず重要なのが、業務の棚卸しと役割分担の明確化です。業務フローを可視化することで、誰が不在でも回る体制を構築しやすくなります。これは、属人化の解消だけでなく、BCPの観点からも有効です。

「時間ではなく成果で仕事を回す」体制づくりが、フレックス運用の土台となります。

評価制度と連動させた制度設計

フレックスタイム制度の導入時には、評価制度の見直しも同時に検討することが望ましいとされています。プロセス評価から成果評価へと軸足を移すことで、時間ではなくアウトプットへの意識が高まります。

フレックスタイム導入と同時に見直したい項目 ・人事評価基準 ・目標管理制度 ・チーム内コミュニケーションルール

コミュニケーションの再設計と心理的安全性の確保

働く時間がバラバラになることで、コミュニケーション不足を懸念する声もあります。そのため、朝会や週次ミーティングの時間帯をコアタイム内に設定するなど、意図的な接点づくりが重要になります。

また、「早く帰る=評価が下がる」と感じさせないためにも、管理職自身が率先して制度を活用する姿勢が不可欠です。上司の行動が、制度の“使いやすさ”を左右するといっても過言ではありません。

実際の企業に学ぶフレックスタイム制度活用の工夫

ここでは、フレックスタイム制度を通じて働き方改革を進めた企業の取り組みをご紹介します。いずれも、制度導入だけで終わらせず、運用面に工夫を重ねてきた点が共通しています。

A社の事例:育児中社員の定着率が向上

A社では、コアタイムを11時から14時に短縮し、それ以外を完全フレックスとしました。さらに、育児中の社員には時短勤務と組み合わせた柔軟な運用を認めています。

その結果、出産後2年以内の離職率が大幅に低下し、育成した人材を継続的に活用できる体制が整ったといいます。

B社の事例:生産性向上と残業時間削減の両立

B社では、フレックス導入と同時に業務プロセスの標準化を推進しました。誰でも同じ品質で業務を進められるようマニュアルを整備し、情報共有ツールも刷新しています。

その結果、残業時間は月平均で約2割減少しつつ、売上高は維持されるという好循環が生まれています。従業員からは「自分で時間をコントロールできることで、集中力が高まった」といった声も挙がっています。

フレックスタイム制度が生み出すこれからの組織のかたち

フレックスタイム制度は、単なる勤務時間の調整手段ではなく、組織の価値観そのものを変える可能性を秘めた制度です。時間ではなく成果を重視し、個人の事情を尊重する姿勢は、エンゲージメントの向上にも直結します。

特に女性のライフステージによる離職を防ぐためには、「制度があること」よりも「使えること」が何より重要です。制度が形骸化すれば、かえって不信感を招くリスクすらあります。

フレックスタイム制度は、働き方改革の“入口”であり、組織変革の“起点”でもあると捉える視点が、これからの管理職には求められています。

柔軟な働き方が定着する組織づくりに向けて

フレックスタイム制度の導入は、働くママをはじめとした多様な人材が安心してキャリアを継続できる環境づくりに直結します。その一方で、業務設計や評価制度、マネジメントの在り方まで含めて見直す必要があるため、決して簡単な取り組みではありません。

しかし、実際に成果を上げている企業では、少しずつ試行錯誤を重ねながら、自社に合った形へと制度を育てている点が共通しています。完璧な制度設計を目指すより、まずは小さく始めて改善を重ねる姿勢が、成功への近道といえるでしょう。

柔軟な働き方を実現することは、単なる福利厚生の充実ではなく、企業の持続的成長に直結する重要な経営課題です。そのためにも、ぜひ、本記事で解説したフレックスタイム制度の考え方と運用ポイントを実践ください。

(執筆・編集:エムダブ編集部)

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