子育てしながらフルタイム勤務を続けるための社内支援の仕組み
子育てとフルタイム勤務の両立は、多くの企業で依然として大きな課題となっています。とくに子育て期の従業員は、時間の制約だけでなく、精神的負荷やキャリア停滞への不安など、複合的な悩みを抱えることが少なくありません。そのため企業側が適切な支援策を整備し、従業員が安心して働き続けられる環境をつくることが強く求められています。 子育て世帯の離職防止は、生産性向上や採用コスト削減にも直結することが指摘されており、企業全体にとっても重要な経営課題とされています。
本記事では、子育てしながらフルタイム勤務を続けるために企業が整備すべき仕組みについて、課題の深掘りから実践的な施策、企業での具体例までわかりやすくまとめております。
フルタイム勤務と子育て両立に潜む課題を整理する
フルタイム勤務を続けたいと考える子育て世帯の従業員は多いものの、現実にはさまざまな障壁によってキャリア継続が難しくなるケースが見受けられます。このセクションでは、両立を阻む代表的な課題を整理し、その背景にある原因をひも解いていきます。
時間的余裕の欠如による慢性的な負担
子育て期の従業員が最も直面しやすいのが可処分時間の少なさです。保育園の送り迎えや家事育児が重なり、フルタイム勤務のスケジュールと衝突することが多くなります。 とくに理由として挙げられるのは以下の通りです。
- 会議や業務が「定時前後」に集中している
- 属人化した作業が多く、業務調整が困難
- 突発対応が発生しやすい職場構造
これらは単なる「忙しい」という現象ではなく、業務設計や役割分担が最適化されていないことが根本要因となっています。
心理的安全性の不足とキャリア停滞への不安
子育て期の従業員は「迷惑をかけたくない」という心理が働きやすく、相談や申請を控えてしまう傾向があります。また、昇進や新しい業務を任せられにくくなることで、キャリア成長が止まるのではないかという不安を抱えます。 さらに、上司側が育児社員への対応方針を明確に持っていない場合、評価の公平感が揺らぎ、エンゲージメント低下を招くことが指摘されています。
キャリアも大切にしたいけれど、子育て期はどうしても遠慮してしまう——という声は多く挙げられています。
突発休が発生した際の対応ルール不足
子どもの発熱や学校連絡など、突発対応は避けられない出来事です。しかし企業側が明確なルールを持っていない場合、対応が属人化し、本人もチームも負担を感じる結果につながります。
コミュニケーション不足による孤立感
リモートワークが進む中で、育児社員は仕事中の雑談や相談の機会が減り、孤立感を抱くケースが増えています。これが心理的負担の増大や離職検討につながることもあります。
企業で実際に取り組まれている支援施策
ここからは、フルタイム勤務と子育てを両立するために企業が導入している支援策を紹介します。制度だけでなく、運用ルールやチームの協力体制が整えられている企業ほど成果が出ている点が特徴です。
柔軟な働き方を可能にするハイブリッド勤務
A社では、出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッド勤務を導入しています。出社日はチームでの対話を重視し、リモート日は集中業務に専念するスタイルです。この仕組みにより、送迎や家事とのバランスが取りやすくなり、育児社員の残業が減少したとされています。
突発休に対応したチーム体制の構築
B社では、仕事を複数名で担当する「ペア業務制」を導入。担当者に突発休が生じても業務が滞らない仕組みを整備しています。 この仕組みは単に負担分散を目的とするものではなく、業務属人化を防ぎ、組織全体の生産性向上につながる施策として評価されています。
公平性を担保した評価制度の見直し
「時間ではなく成果」で評価する制度へ移行した企業も増えています。フルタイム勤務が難しい時期でも、適切なKPI設定によりキャリアの停滞を感じさせない取り組みです。
| 評価項目 | 内容 |
| 成果指標 | 数値に基づき評価。勤務時間に左右されない。 |
| 行動指標 | チーム貢献度、主体性、改善提案など。 |
このように、評価制度そのものを見直すことで、従業員の不安を解消し、長期的な活躍を後押しすることが可能となります。
復職後フォローの強化と面談制度
育休復帰者に対して、定期的に上司との面談やキャリア相談の機会を設けている企業もあります。復帰直後は環境変化で心理的負担が大きくなりやすいため、伴走する体制が不可欠です。
家庭支援サービスの提供と福利厚生の拡充
保育サポート、家事代行補助、オンライン家事ツールなど、家庭環境を支えるサービスを導入する企業も増えています。従業員の可処分時間を確保し、業務への集中力を高める効果が期待されています。
子育て期のフルタイム勤務を支えるためのポイント
フルタイム勤務を続けたい従業員を支援するためには、制度だけではなく、「活用しやすい運用」と「上司の理解」が欠かせません。このセクションでは企業側が押さえるべきポイントを整理します。
| ポイント | 意義 |
| 制度の柔軟性 | 従業員の状況に合わせた調整が可能に。 |
| コミュニケーションの可視化 | 孤立防止・心理的安全性の向上。 |
| 業務標準化 | 属人化を防ぎ、突発休にも対応。 |
制度・運用・風土の三位一体で支援することが、企業全体の生産性向上にもつながります。
企業が取り組むべき両立支援の方向性
本記事では、子育てしながらフルタイム勤務を続けるための支援策について、課題、施策、具体例の流れで解説してきました。両立支援は制度を導入するだけではなく、運用のしやすさや職場の理解度が成果を左右します。従業員の心理的安全性を高め、キャリアが継続できる環境をつくることが不可欠です。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した柔軟な働き方の導入、評価制度の見直し、チーム体制の強化を実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

