女性管理職を増やしたいという思いはあっても、「そもそも候補者が名乗り出てこない」「育成のための成功パターンが社内に見当たらない」と悩む企業は少なくありません。特にライフステージの変化が大きい女性にとって、キャリアの継続は不安が伴うものです。だからこそ、企業側が安心して成長に踏み出せる土台を整えることが欠かせません。
ここで重要になるのが 社内ロールモデル(キャリアの道筋を示す存在) を可視化し、育成につなげる戦略です。ロールモデルは “憧れの象徴” である必要はなく、「自分でも実現できそうだ」と感じさせる身近な存在であることがポイントだとされています。
また、ロールモデルの存在はエンゲージメント向上にも寄与し、結果として女性従業員の離職防止へとつながるという報告もあります。女性のキャリア意欲は、制度よりも「身近な成功例」から強く影響を受けるとも言われています。
本記事では、女性管理職を育てたい企業に向けて、ロールモデルを生かした戦略を体系的にまとめております。
社内にロールモデルが不足する背景と見えていない課題の整理
女性管理職が育たない企業の多くには、「ロールモデルがいない」「キャリアの道筋がわからない」といった共通の課題があります。しかし、その背景には “女性側の意欲不足” のように見えて、実際には環境起因の問題が潜んでいるケースが非常に多いとされています。本章では、企業がつまずきやすい構造的な課題と、その深層を整理します。
ロールモデルの不在がキャリア選択を阻む構造
ロールモデルが少ないと、社員は将来像を描きにくくなります。とくに女性は出産・育児・介護などライフステージの影響が大きく、「管理職になった後の働き方」がイメージしにくい傾向があります。
- 管理職の働き方や負荷がブラックボックス化している
- 「家庭と両立できるのか」という不安が解消されない
- 昇進後のサポート制度が知られていない
根本的な原因は、情報提供の不足と可視化の欠落にあります。つまり、女性側の意欲不足ではなく、企業側の説明責任が曖昧になっている状態といえるでしょう。
属人化した業務が昇進の壁になっている
管理職候補に多いのが、「自分しかできない業務を抱えているため昇進どころではない」という状態です。属人化が進むと、責任が集中し、成長機会や挑戦の余白が生まれません。
業務の属人化は本人のキャリアを押し下げるだけでなく、企業全体の生産性を低下させる重大なリスクです。
そのため、業務整理や可視化は女性管理職育成の土台になる取り組みといえます。
評価・キャリア支援の不透明感による心理的ハードル
昇進後の支援制度があっても、「利用しづらい雰囲気」「前例がない」という理由で活用が進まないケースも多いものです。これにより、キャリア意欲は徐々に低下し、「どうせ難しい」という感情が固定化します。
こうした心理面の障壁を取り除くためには、制度そのものよりも、 実際に制度を利用している人の声や成功体験の共有が欠かせません。
ロールモデルを育てる社内施策と実践のポイント
ここからは、企業が明日から取り組めるロールモデル戦略について整理します。重要なのは、特別な人材をつくるのではなく、「見える化」と「支援の仕組み」で自然にロールモデルが育つ環境を整えることです。
ロールモデルの働き方・キャリアを可視化する仕組みづくり
まず取り組みたいのが、社内で活躍している女性管理職のキャリア軌跡を整理し、誰でもアクセスできるようにすることです。
| キャリアの変遷、ライフイベント、支援制度利用状況 | 将来像を描きやすくし、不安を軽減する |
可視化の際は、「すごい成功例」よりも「現実的な働き方」を共有するほうが効果的だとされています。 “背伸びしなくても目指せる未来像” を見せることが重要です。
管理職候補を孤立させないメンタリング制度
自信を持ってキャリアを進めるには、相談できる相手の存在が不可欠です。メンタリング制度は、キャリア支援だけでなく心理的安全性の確保にも寄与します。
「不安を一人で抱える状態」をなくすことが、女性の挑戦意欲を高める最大の鍵です。
- 定期的な1on1で悩みを早期に把握する
- ロールモデルと候補者をマッチングする
- 育児・介護との両立に関する相談窓口を整備する
管理職の業務負荷を明確化し、挑戦しやすい設計に
「管理職=長時間労働」という先入観をなくすため、業務内容・意思決定プロセス・裁量範囲を整理し、過度な負荷を取り除くことが不可欠です。
具体的には、次のような施策が挙げられます。
- 会議の見直し(代替可能性、参加必須かの整理)
- 意思決定の基準を文書化し、属人化を解消する
- メンバーへの権限委譲を計画的に実施する
これらの取り組みにより、管理職の役割が明確になり、「自分には難しそう」という感情を軽減できます。
制度利用の“前例”を積み上げて心理的安全性を高める
制度があっても利用されない企業では、「前例がないから不安」という声が多く聞かれます。そこで、制度を積極的に利用した社員の体験を社内報やミーティングで共有し、前向きなイメージを浸透させることが必要です。
A社では、育児と管理職を両立する女性社員のインタビューを動画で公開したところ、育成候補者の意欲が向上したという報告があります。B社では、制度利用者がメンターとなり、後輩社員に安心感を与える仕組みを整えました。
こうした“小さな前例”の積み重ねが、ロールモデル戦略の効果を高める要因となります。 企業文化の転換は、一人の行動から始まるとされています。
女性管理職を自然に育てる社内文化のつくり方
ロールモデルは企業が「用意するもの」ではなく、「環境が整うと自然に生まれるもの」です。本章では、女性管理職が継続的に育つ社内文化の土台をつくるための視点を整理します。
挑戦を歓迎するメッセージを組織として発信
女性が「やってみたい」と思える空気づくりが重要です。そのためには、経営層からの明確なメッセージと、中間管理職が実践する日常行動が一致している必要があります。
・挑戦した社員を称賛する ・失敗を許容し、学びを共有する文化を根付かせる ・キャリア意欲を持つ社員を積極的に支援する
これらはすぐに取り組めるアクションであり、ロールモデルの自然発生を促す土壌になります。
情報共有の仕組みでキャリアの見通しをクリアに
ロールモデル情報や制度の活用方法は、散発的に伝えるだけでは十分ではありません。 継続的にアクセスできる“情報プラットフォーム”が必要です。
社内ポータル、ナレッジツール、動画ライブラリなどを活用し、キャリア関連情報を一元化すると、候補者が自分のペースで学べる環境が整います。
ここでも情報の透明性が心理的安全性を高め、挑戦意欲を後押しします。
女性管理職育成を加速させる社内ロールモデル施策のまとめ
女性管理職を育てるには、特別な研修や高度な制度よりも、まず「社内ロールモデルを可視化する」ことが重要だとされています。ロールモデルは、女性のキャリア不安を軽減し、未来への道筋を示す存在です。また、制度利用の前例や情報共有の仕組みを整えることで、挑戦しやすい文化が育ちます。
さらに、業務の属人化を解消し、負荷を調整することで「管理職=大変」という先入観を払拭できます。これは女性に限らず、すべての従業員のキャリア形成にメリットがあります。
企業が一歩踏み出すだけで、女性人材が主体的にキャリアを描ける未来は大きく変わっていきます。 そのためにも、ぜひ、本記事で解説したテクニックを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

