産後の復職は、本人にとっても職場にとっても大きな転換点となる重要なタイミングです。育児と仕事の両立という新たな生活が始まる中で、身体的な負担だけでなく、仕事への不安や周囲との距離感など、目に見えにくい課題も数多く生じるとされています。
この時期のフォロー体制が不十分な場合、「復職したものの続けられない」状態に陥りやすく、結果として貴重な人材の離職につながるという指摘もあります。一方で、適切な支援とチームづくりが行われていれば、復職者は戦力として再び力を発揮し、組織全体の成長にも大きく貢献します。
本記事では、産後の復職者を迎える企業や管理職の方に向けて、復職後も強いチームをつくるためのフォロー施策について、背景や課題、具体的な成功施策を交えながら分かりやすくまとめております。
産後復職フォローの全体像と押さえるべき視点
産後の復職フォローは、単なる時短勤務や在宅勤務といった制度の提供にとどまるものではありません。復職者が心理的にも安心して働ける状態をつくり、チーム全体として成果を出せる環境を整えることが最終的な目的となります。
そのためには、復職者本人への支援だけでなく、受け入れる側である上司やチームメンバーの理解と協力が不可欠です。本章では、制度・マネジメント・チーム風土の三位一体で考える復職フォローの全体像を整理します。
復職後に顕在化しやすい課題とその根本要因
産後復職における課題は、表面上の働き方の問題だけでなく、組織構造や心理的要因とも深く結びついています。ここでは、現場で特に多く見られる課題と、その背景にある根本原因を掘り下げます。
業務量と働ける時間のミスマッチ
復職後は時短勤務や残業制限が設けられるケースが多い一方で、業務内容や業務量が産前と変わらないままになっている例も少なくありません。その結果、時間内に仕事が終わらず、本人が強いプレッシャーを感じてしまう状況が生まれます。
根本的な原因としては、業務の属人化や業務棚卸し不足が挙げられます。誰がどの仕事を担っているのかが整理されていないため、調整が後手に回ってしまうのです。
周囲の理解不足による心理的孤立
復職者は、「周囲に迷惑をかけているのではないか」「評価が下がるのではないか」といった不安を抱えやすい状態にあります。しかし、チーム内でその心情が共有されない場合、ちょっとした言動が孤立感や疎外感につながることがあります。
これは、育児と仕事の両立に対する知識や経験の不足が背景にあるとされ、結果としてエンゲージメント低下を招く要因となります。
キャリア停滞への不安と成長機会の減少
復職後は、責任ある業務や新しいプロジェクトから外されてしまうケースも見受けられます。配慮のつもりが、本人にとっては「期待されていない」「成長の機会を失った」と感じる原因となることがあります。
その根底には、短時間勤務=戦力にならないという無意識の思い込みが存在しているケースも少なくありません。
復職者フォローで成果を上げる3つの実践施策
ここからは、復職後も強いチームを維持・強化するために、現場ですぐに取り組める実践施策を3つご紹介します。いずれも大きなコストをかけずに導入できる点が特徴です。
① 復職前後の丁寧なすり合わせと業務再設計
復職支援は、復職日当日から始めるのではなく、できれば復職の1〜2か月前から準備を進めることが望ましいとされています。上司と本人が面談を行い、現在の生活状況や働ける時間、体調面の不安などを共有します。
その上で、業務内容・業務量・責任範囲を具体的に再設計することが重要です。
| 勤務時間 | 時短・シフト・在宅の可否を明確化 |
| 業務内容 | 負荷が高い業務の一時調整 |
| 役割 | 期待役割と評価軸の共有 |
ここで重要なのは、「復職できたから終わり」ではなく、復職後も定期的に見直しを行う運用体制をつくることです。
② 上司による定期的な1on1とメンタルフォロー
復職直後は、業務面だけでなく、育児と仕事の両立に対する不安や罪悪感など、心理的負担も大きくなりやすい時期です。そのため、短時間でも定期的な1on1の実施が不可欠となります。
- 業務負荷が過度になっていないか
- 家庭との両立で困っている点はないか
- チームとの関係で悩みがないか
こうした対話を積み重ねることで、復職者は「見守られている」「一人ではない」という安心感を得ることができ、早期離職の防止につながるとされています。
③ チーム全体で支える風土づくり
復職者のフォローは、上司だけが担うものではなく、チーム全体で支える仕組みづくりが重要です。本人の同意を得たうえで、働き方や配慮事項をチーム内で適切に共有することで、不要な誤解や不満を防ぐことができます。
「お互い様」の意識が根付いた職場は、復職者だけでなく全従業員の働きやすさ向上にも寄与すると考えられます。
復職支援は特定の個人を守る施策ではなく、組織全体の生産性と持続性を高める投資です。
復職者フォローに成功している企業の取り組み事例
ここでは、産後復職者のフォローを通じて、チーム力向上と離職防止の両立を実現している企業の事例をご紹介します。
A社:復職支援マニュアルと業務分担の見える化
A社では、復職予定者ごとに「復職支援シート」を作成し、勤務時間、業務内容、配慮事項を上司・人事・本人で共有しています。また、日常業務についてもチーム内で業務分担を見える化し、誰か一人に負荷が集中しない仕組みを整えました。
その結果、復職後1年以内の離職率が大きく低下し、復職者が安心して戦力化できる環境づくりに成功したと報告されています。
B社:チーム単位での受け入れ研修の実施
B社では、復職者本人だけでなく、受け入れ側のチームメンバーも対象とした研修を実施しています。育児と仕事の両立に関する基礎知識や、無意識の偏見について学ぶ機会を設けることで、チーム内の理解促進を図っています。
これにより、「どう接すればよいか分からない」という戸惑いが減少し、自然なサポート体制が構築されました。
チームで学ぶことで、復職者を特別扱いせず自然に支え合える雰囲気が生まれました。
復職者フォローを通じた強いチームづくりのまとめ
産後の復職は、本人だけでなく、チームや組織全体にとっても大きな節目となります。業務の再設計、上司による定期的な対話、チーム全体で支える風土づくりの3点を意識することで、復職者は安心して力を発揮できるようになります。
こうした取り組みは、復職者の定着だけでなく、他の社員の働きやすさやエンゲージメント向上にも好影響をもたらします。結果として、変化に強く、持続的に成長できる「強いチーム」の形成につながっていくのです。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した復職者フォローの成功施策を、貴社の現場にあわせて実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

