近年、「ママ採用」「ワーママ採用」に本腰を入れる企業が増えています。背景には、労働人口の減少、採用競争の激化、そして女性のキャリア継続支援の重要性が高まっていることが挙げられます。特に優秀な女性人材の離職理由として多いのが、妊娠・出産・育児によるキャリア寸断であり、企業として対応を怠れば戦力流出につながりかねません。そこで注目されているのが、育児中の女性を積極的に迎え入れる「ママ採用」です。ママ採用における企業側のメリットは、単なる人材確保にとどまらず、組織改革、働き方改善、企業ブランド向上など多岐にわたります。
まず押さえておきたいのは、ママ採用によって得られる効果が、即時的・短期的な人員補充だけではなく、組織変革の推進力としても機能する点です。柔軟な働き方の整備、副業・時短制度の再設計、業務属人化の解消など、これまで課題として顕在化していた領域の改善が加速するケースも珍しくありません。結果的に、育児中の女性だけではなく従業員全体の働きやすさにつながることが多くの企業で報告されています。
ママ採用は「人材確保」だけでなく「組織を強くする投資」であるという見方が広がっている今、管理職・経営層が理解しておくメリットは大きいと言えます。本記事では、ママ採用によって企業が得られる具体的なメリットと、実践のポイントについて詳しくまとめております。
ママ採用がもたらす企業メリットの全体像と背景
ママ採用が増加している理由を整理すると「即戦力人材の獲得」「離職防止」「企業価値の向上」の大きく3つに分類できます。いずれも企業の課題解決に直結し、中長期的な成長を支える要素として注目されています。
1|即戦力人材の確保につながる
育児中の女性は、産前・産後・育児休暇を経て復職するケースが多く、経験値を積んだ状態で採用市場に戻る傾向があります。特に、バックオフィス職、マーケティング、営業、人事、広報などでは専門性が高く、即戦力として活躍できる確率が高いと言われています。また、出産前にハイパフォーマンスを発揮していた人材ほど、キャリア継続を希望する比率が高いという傾向もあります。
企業が求める“経験者採用”とママ人材の特性がマッチしやすい点は、大きな魅力と言えるでしょう。
- 育休前までに高パフォーマンスを発揮していた人材を獲得できる
- 新卒から育った即戦力層の離脱を回避できる
- 採用・教育コストを最小化できる
2|職場改革の加速が期待できる
ママ採用は職場改善のきっかけになることが多く、柔軟な働き方の整備を後押しします。勤務時間の見直し、業務の属人化解消、業務の見える化、システム導入など、これまで放置されてきた課題を改善する起爆剤となり得ます。
「子どもを迎えに行く関係で残業ができない分、業務整理が進み、部署全体の生産性が上がった」(人事担当Bさん)
このように、育児を理由とした制約に対応する過程で、結果的に組織全体の働きやすさ向上につながるケースも多く報告されています。
制約がある人材を活かす仕組みづくりは、全社員の生産性向上につながる
3|企業ブランド・採用力の向上
ママ採用を実施している企業は、「多様性を尊重している」「従業員のライフステージを支援している」というポジティブな評価を得やすく、企業ブランド価値の向上につながります。とくに転職市場では、柔軟な働き方を提供できる企業が圧倒的に有利となり、応募数・採用率の向上に貢献します。
| 採用力向上 | 応募数・採用率の増加 |
| 企業価値向上 | 従業員満足度・エンゲージメント向上 |
| 離職低下 | 優秀人材の定着化・人材流出を防ぐ |
採用戦略としてもブランディング戦略としても効果がある点は見逃せません。
企業で進むママ採用の具体施策と成功パターン
ママ採用の推進企業では、採用活動そのものより「受け入れ体制づくり」が成果の分岐点になることが指摘されています。ママを迎え入れたことで成果を上げた企業の取り組みを紹介します。
A社|勤務時間の柔軟化で採用と生産性の両立
A社は時短勤務・時差出勤・在宅ワークを併用できる制度を導入し、ママ人材の採用と生産性向上を両立させました。勤務開始・終了時間を選べる制度を導入したことで、採用競争力が向上し、同時に業務のムダ削減やペーパーレス化が促進されました。
B社|業務の棚卸と分業設計で属人化を解消
B社では育児中の社員の時短勤務が増えたことを機に、業務の見える化プロジェクトをスタート。結果として属人化が解消され、休職・退職者が発生しても業務が止まらない体制を構築できました。
業務改革は「制約ある人材の受け入れ」から始まったという例は多く、結果的に全社の効率化につながるケースが増えています。
C社|子育て支援の福利厚生で定着率を大幅改善
C社はキッズ在席手当や保育関連補助制度を導入。社員の満足度調査では「子育てへの理解がある会社に働き続けたい」という声が増え、年間離職率が導入前の半分以下に減少しました。
採用→定着→活躍のサイクルを回せるかどうかが成功の鍵
ママ採用の取り組みを成功に導くまとめ
ママ採用は人材確保の施策であると同時に、組織の働き方改革を進める強力なドライバーでもあります。即戦力の採用、働き方改善、企業ブランド向上、そして離職率低下といった複数のメリットが期待できる点は、多くの企業で成果が確認されています。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した「柔軟な働き方の整備」「受け入れ体制の構築」「長期的視点の定着施策」を実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

