妊娠・育児・介護といったライフイベントは、誰にとっても仕事との両立に悩みやすい大きな転機です。とりわけ女性社員にとっては、キャリアを継続できるかどうかの分岐点になるケースも少なくありません。
一方で近年は、両立制度を上手に活用しながらキャリアを継続する社員が着実に増えているという変化も見られます。制度は整っているものの、「使いづらい」「周囲に気を遣ってしまう」といった心理的ハードルが障壁となっている企業も多いのが実情です。
本記事では、実際の経験者の声をもとに、妊娠・育児・介護期に両立制度をどのように活用すればキャリア継続につながるのか、管理職が押さえるべき視点も含めて内容を整理してまとめております。
両立制度活用の全体像と押さえるべき要点
まずは、妊娠・育児・介護期における両立制度活用の全体像と、キャリア継続に直結するポイントを整理します。制度は「知っている」だけでは不十分で、「どう使うか」「どう支えるか」が成果を左右します。
両立制度はキャリア断絶を防ぐ経営ツール
両立制度は福利厚生の一環と捉えられがちですが、実際には人材流出を防ぎ、組織力を維持する経営ツールとしての側面が強い制度です。制度が機能しない場合、離職による人材損失が発生し、現場の負担が増大します。
「制度はあるが活用されない」状態こそが最大の経営リスクであると指摘されています。
キャリア継続を左右する三つの視点
経験者の声を整理すると、両立制度の活用成否は次の三点に集約されます。
- 本人が制度を正しく理解しているか
- 上司が心理的安全性を担保できているか
- 職場全体に相互フォローの文化があるか
これらが揃ってはじめて、制度は「使える制度」として機能します。
制度はあるのに活用が進まない背景と現実
多くの企業で両立制度は整備されていますが、現場で十分に活用されていないという声も根強くあります。その背景には、表面化しづらい複数の課題が存在しています。
「制度はあるが使いにくい」という現象
育児休業や短時間勤務、リモートワークなどの制度が形式的に整っていても、実際には取得率が低いケースが少なくありません。現象としては「周囲に迷惑がかかる」「評価が下がりそう」といった不安が利用をためらわせています。
その根本原因には、評価制度が成果ではなく労働時間に依存している点や、管理職側の運用ノウハウ不足が挙げられます。
周囲の無意識の同調圧力
両立制度を利用する社員に対して、表立って否定的な言動はなくても、「申し訳なさ」を感じさせる空気が漂う職場もあります。これにより、利用者自身のエンゲージメント低下や、キャリアへの不安が増幅されていきます。
制度運用の成否は、職場風土に大きく左右されるという指摘は少なくありません。
管理職の理解不足が生む悪循環
管理職が制度の趣旨を十分に理解していない場合、「忙しい時期は避けてほしい」「代替要員がいない」といった発言が現場に波及します。これが利用抑制を生み、結果的に優秀な人材の離職につながる悪循環を生みます。
現場でよく聞かれる声 制度はあるが前例がなく使いづらい 上司に相談すると評価を気にしてしまう 代替要員がいないため遠慮してしまう
経験者の声から学ぶ両立制度の実践活用術
ここでは、実際に妊娠・育児・介護期を乗り越え、キャリア継続を実現している社員の声から、制度活用の具体的な工夫を整理します。
A社:妊娠期からの早期相談で不安を最小化
A社の事例では、妊娠が判明した段階で上司と業務整理の面談を実施しています。早期に業務棚卸しを行うことで、引き継ぎ計画が明確になり、本人の心理的負担も大きく軽減されました。
「早く相談して良かった」という声が多く、結果として復職率の向上につながっています。
B社:育児期のハイブリッドワーク活用
B社では、育児期において出社とリモートワークを柔軟に組み合わせるハイブリッドワークを導入しています。通勤負担の軽減と集中時間の確保が両立できるため、生産性の維持が可能になりました。
本人のキャリア意欲が維持され、管理職候補としての育成も中断せずに進められています。
「短時間勤務でも裁量のある仕事を任せてもらえたことで、キャリアが止まらずに済みました」
| 妊娠期 | 業務調整面談、体調配慮ルール |
| 育児期 | 短時間勤務、ハイブリッドワーク |
| 介護期 | フレックス勤務、在宅勤務 |
管理職が実践すべき支援アクションと具体策
両立制度を「使える制度」に変える鍵は、管理職の関わり方にあります。ここでは、現場ですぐに実践できるアクションを整理します。
1on1での継続的な対話の徹底
両立期の悩みは時期によって変化します。定期的な1on1を通じて、業務量・体調・家庭状況を確認し、小さな不安を早期に拾い上げることが重要です。
相談しやすい関係性の構築が、離職防止の最前線となります。
評価基準の透明化と成果重視への転換
「短時間勤務=評価が下がる」という誤解を払拭するためには、成果基準を明確に示す必要があります。勤務時間ではなくアウトプットで評価する仕組みが、両立支援と生産性向上の両立を実現します。
チーム全体への両立支援意識の浸透
両立支援は特定の個人だけの問題ではなく、チーム全体のテーマです。管理職が制度の意義を言語化し、繰り返し発信することで周囲の理解が進みます。
- 制度利用は「特別扱い」ではないと明言する
- 業務の属人化を防ぐ体制を日常から整える
- フォローしたメンバーも適切に評価する
両立制度活用がもたらす組織と個人への好循環
経験者の声や企業事例からも分かる通り、両立制度の活用は単なる負担軽減策ではなく、組織と個人の双方に好循環を生み出します。キャリア継続による人材定着は、現場の安定と生産性向上に直結します。
また、社員が安心してライフイベントに向き合える環境は、エンゲージメントの向上や企業への信頼感の醸成にもつながります。両立支援は「守り」だけでなく「攻め」の人材戦略でもあるといえるでしょう。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した実践的な両立制度の活用術と管理職の支援アクションを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

