近年、女性の就業継続が企業の重要なテーマとなり、特に産休・育休からの復職後に離職が発生してしまうという課題に直面する企業が増えています。制度として産休や育休を整備している企業は多いものの、実際には「復帰しても働き続けられるのか不安」「両立できないかもしれない」といった心理的負担が大きく、復職直後の離職率が高くなる傾向があります。
特に、管理職や人事担当者にとっては、貴重な人材の離脱は大きな損失であり、組織全体の生産性にも直結します。そのため、単に制度を整えるだけではなく、復帰後の実務面・心理面の両方を支える仕組みが求められています。復職後数か月の支援体制が、社員のキャリア継続と組織へのエンゲージメント向上に大きく影響すると指摘されています。
産休育休制度を「使える制度」へと進化させることが、離職防止と企業の競争力向上に不可欠です。
本記事では、産休からの復帰者が辞めない職場を実現するための具体的な取り組みについて、課題の整理と解決策、企業事例を交えながらまとめております。
復職者が抱える不安と組織課題の整理
復職後に女性が離職を選択してしまう背景には、複数の課題が複雑に絡んでいます。表面的には「家庭との両立負担」が語られがちですが、実際には、職場環境や制度運用の問題が根本的要因となるケースが少なくありません。以下では、代表的な課題を深掘りして整理します。
仕事の量や責任が調整されず、負担が増大してしまう
復職後、以前の業務量のまま戻すケースはまだ多く存在します。その結果、時間制約があるなかで成果を求められ、疲弊してしまう例が見られます。本来であれば、一定期間の段階的な業務復帰を行い、徐々に責任や業務範囲を戻していくことが重要です。
- 戦力として期待される一方で支援体制が不足
- 成果が出せず自己効力感が低下
- 周囲への申し訳なさから退職を選択
職場内コミュニケーション不足による心理的孤立
出産・育児を経て仕事に復帰すると、環境の変化についていけず「自分だけ取り残されてしまった感覚」に陥ることがあります。チームとの対話不足はエンゲージメント低下や離職意欲の高まりにつながると指摘されています。
「職場で自分の居場所がない」と感じたら、続ける理由を見つけにくくなります
制度は整っているが運用が属人化している
制度が存在していても、上司の理解度や職場の文化によって実際の使いやすさには差が生まれます。制度が「遠慮しながら使うもの」になっている場合、社員は継続的なキャリア形成が困難になります。
復職後の不安を解消する企業施策の実例と効果
課題を解決するためには、制度の整備だけではなく、運用面の改善と心理的安全性の確保が不可欠です。ここでは、離職を防ぎ、社員が長く活躍できる環境を実現している企業の取り組みを紹介します。
段階的な復帰計画と業務可視化の徹底
A社では、復職前に上司と本人が面談を行い、半年間の復帰ロードマップを作成しています。復帰後すぐにフルの業務量に戻すのではなく、徐々に負荷を調整。業務の棚卸しを行い、属人化していた業務を分担することで無理のない復帰が可能となりました。
| 復帰半年以内の離職率低下 | 前年比45%改善 |
1on1面談の定期実施による心理安全の確保
B社では復職者に対し、上司と月1回の1on1を必ず実施。「困りごとを言える環境」を整えることで不安材料の早期発見を図っています。面談内容は人事とも共有し、組織で支える体制を構築しています。
社内コミュニティの活性化とメンター制度
同じ悩みを持った社員同士が交流できるコミュニティや、先輩ママ社員がメンターとして伴走する仕組みを導入。心理的孤独が大幅に解消され、働き続ける意欲向上につながったとされています。
「自分だけの問題ではない」と感じられることが、継続意欲を高める大きな要因となります。
復職者の活躍を支える職場づくりのポイント整理
復職者を支えるための環境は、特定の社員だけのための仕組みではなく、企業全体の生産性を向上させる改革へとつながります。以下のポイントを押さえることで、離職防止はもちろん、組織力の強化にも寄与します。
- 段階的な業務復帰と明確な目標設定
- 心理的安全性の高い対話機会の確保
- 制度を使いやすくする文化づくり
- コミュニティと支援ネットワークの整備
復職はゴールではなく、新しいキャリアのスタートです。企業の支えがあることで、社員は安心して能力を発揮でき、その結果として組織への高いエンゲージメントが生まれます。
社員が辞めない未来をつくるために
産休・育休からの復職は、社員にとって人生の大きな転機です。企業が意図的に支援体制を整えることで、離職を防ぐだけでなく、育成された人材が長期的に活躍する組織をつくることができます。復職支援は、単なる福利厚生ではなく、企業成長の戦略として位置付けることが求められています。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した取り組みを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

