入社半年で育休。ママの居場所を新設する、飲食業界の新しい挑戦

「育休から戻ったとき、自分の居場所はあるだろうか」——そんな不安を抱えながら復職を考えている方は、少なくないと思います。特に飲食業界は体力勝負のイメージが強く、子育て中の女性には「続けるのが難しい職場」と感じている人も多いのではないでしょうか。

そんな中、「食でつなぐ人と街」をコンセプトに飲食店を複数店舗運営するカラビナフードワークス株式会社では、育休復帰にあたって新たな事務職ポジションを新設したり、飲食業界では珍しい在宅ワーク制度を導入したりと、働き続けられる環境づくりに本気で向き合っています。社員の声を起点に会社の仕組みを変えてきた同社の取り組みは、業界の枠を超えてヒントになるものばかりでした。

今回は人事部長の池野さんに、制度が生まれた背景や今後のビジョンについて、率直にお話を伺いました。
登場人物
わたしリズムWebマガジン編集部 徳林
「リアル3拠点生活」を実践中のわたしリズムWebマガジン編集部員。

カラビナフードワークス株式会社 池野さん
人事部長として、飲食業界で働くスタッフが長く幸せに働ける環境づくりに取り組む。中途入社から約2年半、採用・制度整備・社内コミュニケーション改革を牽引している。
目次

飲食業界で女性が働くリアル——正社員の4人に1人が女性、その現状は?

徳林:御社の社員に占める女性の割合を教えてもらえますか?
池野さん:正社員ベースでいうと、現在は約25%——つまり4人に1人が女性という状況です。飲食業界全体として男性が多いイメージはあると思いますが、弊社もまだその状況に近いですね。一方でアルバイトスタッフは約80%が女性で、こちらはかなり女性中心の現場になっています。

お子さんがいながら働いている方もいますし、独身の方もいます。年齢も21歳から45歳まで幅広く、いろんなライフステージの女性が在籍している状況です。
徳林:産休・育休を取得して復帰されたスタッフの方もいらっしゃるんですか?
池野さん:はい、います。実は今、二人目のお子さんで二回目の育休復帰という方が在籍しています。男性の育休については、昨年初めて取得したスタッフが出まして、周囲のフォロー体制を整えながらしっかり休んでもらうことができました。

以前は制度が十分に整っていなかったのですが、育休を取得できる体制と、その間の引き継ぎスケジュールをしっかり立てることで、今はかなりスムーズに運用できるようになっています。

「現場に戻るのが不安」という声から生まれた——新ポジションと在宅ワークの話

徳林:育休が明けて職場に戻るとき、どんなサポートをされているんですか?
池野さん:一回目の復帰のときは、そのまま接客の現場に戻っていただいていたんです。でも今回、二人目の育休明けの相談を私と話す中で、上の子も小さい状態でまた現場に入るのはなかなか大変だということが見えてきました。

そこで、新しい事務職のポジションを作って復帰してもらうという選択肢を作りました。私のいる人事部のサポートや教育制度の整備を一緒に進めるメンバーとして、今動いてもらっています。まだ手探りな部分もありますが、少なくともその方にとって「戻れる場所」が生まれたことは大きかったと思っています。
徳林:お子さんの急な発熱など、突発的なことへの対応はどうしているんですか?
池野さん:子どもの体調不良で外出はできないけれど仕事はできるという日は、在宅ワークで対応できるようにしました。おそらく弊社では初めての取り組みです。スケジュールや報告のフォーマットも一緒に整えて、ルール化しています。

やはり「急なことが起きたとき対応してもらえる会社かどうか」が、働き続けるかどうかの判断になると思っていて。そこは西川社長からも裁量をいただいているので、柔軟に動けているかなと感じています。

入社半年で社長に直談判——「つまらない会議」を変えた理由

徳林:社員同士のコミュニケーションはどんな雰囲気ですか?複数店舗があると、なかなか横のつながりが生まれにくかったりしますよね。
池野さん:実は私、入社して半年も経たないうちに社長に直談判しまして(笑)。もともと半年に一度の全社会議があったんですが、各店舗ごとに座って、部長や社長の話を一方的に聞いて終わり、という形だったんです。入社したとき、他店舗の社員の顔と名前もわからないまま会議が終わってしまって。

「この会議では参加したくないです」と正直に伝えたら、「変えていいよ」と言っていただけて。それからは弊社の一号店を一日お借りして、グループに分かれてのゲームやワークショップを取り入れた交流型の全社会議に変えました。今は新入社員でも他店舗の顔と名前が最低限わかるようになっています。
徳林:社長と現場スタッフが定期的に話せる場は、他にもあるんですか?
池野さん:月に一度、理念勉強会というものを各店舗で開催しています。他業種の成功事例が掲載された月刊誌を読みながら、「なぜうまくいったのか」を社員みんなで考え、意見を出し合う場です。社長もオンラインで参加するので、新入社員でも毎月一度は社長と話せる機会があります。

前職では社長に会えるのが長年働いてようやく一、二回という職場だったので、この距離感は私自身も入社してびっくりしました。社長が社員一人ひとりの意見をちゃんと聞いて、次に店舗を訪れたときに声をかけてくれたりするんですよね。そういう姿勢が、働きやすさにつながっているんだと思います。

「飲食業界の当たり前」を変えたい——完全週休二日制と、これからのビジョン

徳林:今後、さらに強化していきたい取り組みはありますか?
池野さん:まず労務改善として、今期(2月スタート)から完全週休二日制に切り替えました。もともと月間8日固定の休日でしたが、飲食業界でもそういった「体を張って当然」という時代ではなくなってきていると感じていて。しっかりオンとオフを切り替えられる職場にしていきたいと思っています。

もう一点は、社員同士の交流をもっと増やすこと。自分の店舗だけで完結するのではなく、会社全体で一緒に働いているという感覚を育てていきたいんです。チームビルディングのワークやセミナーは去年から少しずつ始めていて、今期はそこをしっかり進めていきたいと考えています。
徳林:女性の役職者を増やしていくという点では、どのようにお考えですか?
池野さん:現在、役職者20名のうち女性は1名という状況です。前職のコーヒーチェーンでは、女性が入社2〜3年目で店長を務めるのが当たり前の環境でしたので、正直なところ、まだまだ課題があると感じています。

採用でも積極的に女性社員の応募を呼び込んでいますし、長く働き続けながら役職を目指せる環境をつくっていくことが、今の一番大きなテーマです。正社員の比率もまず25%から上げていきたいと思っています。
編集部徳林のまとめ

「育休明けに戻れる場所がない」「子どもの急病で早退しにくい」——飲食業界ではよく聞かれてきたそんな声に、カラビナフードワークス株式会社様は一つひとつ丁寧に向き合っていました。新しいポジションを生み出して復帰をサポートしたり、在宅ワークを初導入したり。その背景には、トップダウンではなく、現場の声を起点に動く社風がありました。

完全週休二日制への移行や役職者の女性比率向上など、課題もまだあると池野さんは率直に話してくださいました。でも、その誠実さこそが、長く働き続けたいと思える職場の土台なのかもしれません。あなたの職場では、働き続けるための仕組みはどんなふうに動いていますか?

取材した企業について
企業名カラビナフードワークス株式会社
事業内容飲食店運営業務・製造業務・コンサルティング業務・ウエディング業務・EC事業
所在地〒550-0014 大阪市西区北堀江3-12-31
サイトURLhttps://www.kfw.co.jp/

※ 本記事の内容は、2026年3月19日取材当時のものです。

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