近年、採用市場において「子育てと仕事を両立しやすい会社かどうか」が、企業選択の重要な判断軸になっています。少子化による人材不足が深刻化する中で、経験やスキルを持つ子育て世代の人材を確保できるかどうかは、企業の将来を左右する要素といえます。
こうした流れの中で注目されているのが、リモートワークとフレックス制度の導入と実効性の強化です。制度そのものは珍しいものではなくなりつつありますが、「実際に使いやすい状態で機能しているかどうか」が採用力に大きな差を生んでいます。
本記事では、子育て世代に選ばれる企業になるために不可欠なリモートワークとフレックス制度の考え方、具体的な導入事例、そして実践時の課題と対策について内容を整理してまとめております。
リモート&フレックス制度が求められる理由と採用への影響
リモートワークやフレックス制度は単なる福利厚生ではなく、企業の採用戦略そのものに直結する経営施策となっています。ここでは、その背景にある課題と、現場で顕在化している問題を整理します。
子育て世代の離職リスクが高止まりしている現実
出産や育児を機に退職を選ぶ社員が依然として多い背景には、「時間的制約」と「突発的な対応が求められる子育て特有の事情」があります。保育園の送迎や子どもの体調不良など、予測できない事態に対応しきれない職場環境では、どれだけ意欲があっても就業継続が困難になります。
表面的な現象としては「離職率の上昇」として現れますが、その根本には柔軟な働き方を受け入れる体制や風土が整っていないという組織課題が潜んでいます。このギャップが、採用活動においても企業の魅力を下げる要因になっていると指摘されています。
制度はあっても活用されない形骸化の問題
リモートワークやフレックス制度を「制度としては導入している」ものの、実際には上司の理解が得られず使いにくい、という声は少なくありません。評価が下がるのではないかという不安から、制度を利用すること自体が心理的な負担になっているケースもあります。
このような状況では、制度そのものが採用のアピールポイントにならず、「実態は違うのではないか」と求職者に見抜かれてしまいます。結果として、制度導入の投資対効果が十分に発揮されていないのが実情です。
採用市場における企業選別の視点が変化している
近年の求職者、とりわけ子育て世代は、給与や福利厚生だけでなく、働き方の柔軟性や上司の理解度、チームのサポート体制まで含めて企業を評価する傾向が強まっています。口コミサイトやSNSを通じて、実際の運用状況が可視化されやすくなっている点も特徴です。
そのため、制度の有無だけでなく、「制度が日常業務にどう根付いているか」が採用力を大きく左右する時代に入っているといえるでしょう。
子育て世代に選ばれる企業のリモート&フレックス活用事例
ここでは、実際にリモートワークやフレックス制度を活用し、採用力向上と定着率改善の両立に成功している企業の取り組みをご紹介します。
A社:全社リモート化で地方在住の子育て人材を獲得
A社では、従来の出社前提型の働き方を見直し、原則リモートワークを基本とした勤務形態へと移行しました。これにより、都市部だけでなく地方在住の子育て世代からの応募が増加し、採用母集団が大きく拡大しています。
さらに、業務のオンライン化と評価基準の明確化を同時に進めたことで、「場所ではなく成果で評価される」という安心感が醸成されました。結果として、育児中の優秀な即戦力人材の確保に成功しています。
「出社が前提でなくなったことで、子どもの生活リズムを優先しながら働けるようになりました」
B社:フレックス制度の柔軟運用で定着率が向上
B社では、コアタイムを最小限に設定したフレックス制度を導入し、始業・終業時間を各自が柔軟に調整できる体制を整えました。保育園の送迎時間に合わせて勤務時間を調整できるため、子育て世代のストレスが大きく軽減されています。
制度導入後、育児と仕事の両立が理由での離職が減少し、定着率が改善しました。加えて、時間の使い方を個人が主体的に考えるようになり、業務集中度が高まった点も大きな成果とされています。
リモートとフレックスを支える運用面の工夫
両制度を形骸化させないためには、ツールとルールの整備が不可欠です。多くの企業では、以下のような取り組みを組み合わせています。
- チャットツールやWeb会議による非同期コミュニケーションの促進
- タスク管理ツールによる業務の見える化
- 評価指標の成果基準への見直し
これらを組み合わせることで、「どこで働いていても」「どの時間帯で働いていても」業務が滞らない体制づくりが進んでいます。
| リモートワークの常態化 | 通勤負担の軽減、採用エリアの拡大 |
| フレックス制度の柔軟運用 | 育児と仕事の両立支援、定着率向上 |
制度導入時に直面しやすい課題とその根本原因
リモートワークやフレックス制度は万能ではなく、導入段階ではさまざまな課題が顕在化します。ここでは、特に多くの企業が直面する壁とその背景を整理します。
管理職のマネジメント不安と評価の難しさ
「部下の働いている様子が見えない」「業務の進捗が把握しにくい」といった不安は、多くの管理職が抱える共通の悩みです。従来の対面型マネジメントからの転換が進まず、制度活用にブレーキがかかるケースも少なくありません。
その根本原因は、時間や行動量を基準とした評価観に依存してきた点にあります。成果指標が曖昧なままでは、リモートやフレックスの真価を引き出すことは難しいとされています。
チーム内の不公平感と心理的な摩擦
子育て世代だけが制度を利用しているように見えると、「負担が一部の社員に偏っている」という不満が生じやすくなります。この不公平感が放置されると、チーム全体のエンゲージメント低下につながりかねません。
ここでも重要なのは、制度設計だけでなく、業務配分や評価、情報共有の透明性を高めることです。心理的納得感の醸成が、制度定着の前提条件となっています。
リモート・フレックスは「一部の人の特権」ではなく、「全社員の生産性を高める仕組み」として位置付けることが重要です。
採用力を高めるために今すぐ始めたい実践ポイント
制度そのものを導入するだけでなく、日常業務にどう落とし込むかが、採用力向上の成否を分けます。ここでは、管理職・企業がすぐに取り組める実践ポイントを整理します。
- 業務プロセスの標準化と可視化を進める
- 成果とプロセスの両面から評価する基準を設定する
- 管理職へのマネジメント研修を定期的に実施する
- 子育て世代の声を制度改善に反映する仕組みを持つ
特に、制度を利用している社員の「生の声」を定期的に拾い上げることは、運用改善の精度を高める上で欠かせません。トップダウンだけでなく、ボトムアップの視点を取り入れる姿勢が、企業文化の定着を後押しします。
子育て世代に選ばれる企業になるための要点整理
リモートワークとフレックス制度は、子育て世代にとって働き続けられるかどうかを左右する極めて重要な要素です。単なる制度導入にとどまらず、評価制度、業務設計、マネジメントの在り方まで含めた総合的な働き方改革として取り組むことが、真の採用力向上につながります。
また、これらの取り組みは子育て世代だけでなく、介護や治療と仕事の両立を目指す社員にとっても大きな支えとなります。結果として、多様な人材が長く活躍できる組織基盤が形成され、企業の競争力そのものが底上げされていくのです。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説したリモート&フレックス制度を軸とした職場改革を実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

