働き方の多様化が進む中で、妊娠期や介護期といったライフステージの変化に対応できる職場づくりは、企業にとって避けて通れないテーマとなっています。とくに管理職層においては、単に制度を整えるだけでなく、実際に「使われる仕組み」に落とし込むことが求められています。
出産や育児、家族の介護といった出来事は、働く人の意欲や能力が低下する要因ではなく、むしろ企業文化を進化させるチャンスと捉えられているケースも増えています。こうした認識を全社で共有できるかどうかが、人材定着率や組織の持続力を左右すると指摘されています。
本記事では、ワーママをはじめとする多様なライフステージを支える企業文化のつくり方や、現場で実践できる具体策について内容をまとめております。
ライフステージに寄り添う働き方の全体像と要点
この章では、妊娠期や介護期を迎える社員と共存するために、企業側が押さえておくべき基本的な考え方を整理します。制度設計だけでなく、運用や風土づくりまでを一体で捉えることが重要になります。
多様な事情を前提とした業務設計の重要性
育児や介護と仕事を両立する社員が増える中で、従来の「フルタイム常駐前提」の業務設計は限界を迎えつつあります。業務の進め方が個人の負担や自己犠牲に依存していると、属人化が進み、特定の社員に過剰な責任が集中しやすくなります。
その結果、妊娠や介護といったライフイベントをきっかけに、優秀な人材が離職してしまうリスクが高まります。業務単位の整理や標準化を進めることで、誰かが一時的に抜けても業務が止まらない体制づくりが不可欠となっています。
心理的安全性と相互理解の土壌づくり
制度以上に重要とされているのが、職場内の空気や人間関係です。育児や介護の事情を「言い出しにくい」「迷惑をかけてしまう」と感じてしまう環境では、どれほど制度を整えても利用が進まない傾向があります。
こうした背景には、無意識の偏見や、過去の働き方に対する固定観念が根強く残っていることが挙げられます。管理職が率先して情報共有を促し、相談しやすい雰囲気をつくることが、エンゲージメント向上につながるとされています。
短期的効率と中長期視点のバランス
業務効率だけを優先すると、急な早退や在宅勤務を「例外」として扱う文化が生まれやすくなります。しかし、中長期的に見ると、柔軟な働き方を許容できる企業のほうが人材確保力に優れているという調査結果もあります。
短期的な生産性のみに目を向けるのではなく、組織全体の継続性や採用力といった視点から、制度の価値を捉え直すことが重要です。
見過ごされがちな課題と組織に潜む根本要因
ここでは、ワーママや介護期の社員が働きづらさを感じる要因について、現象とその背後にある構造的な課題を掘り下げていきます。単なる制度不足ではなく、組織の設計思想に起因しているケースが多い点が特徴です。
残業削減が進まない背景にある業務量の固定化
「残業を減らしましょう」というスローガンは多くの企業で掲げられていますが、実態として業務量そのものが見直されていないケースが少なくありません。そのため、育児や介護で時間制約のある社員ほど、仕事の質ではなく「時間の長さ」で評価されてしまう傾向があります。
根本原因としては、業務の優先順位付けが曖昧であることや、無駄な承認プロセスが残っていることが挙げられます。
制度はあるのに利用されない心理的ハードル
育休延長や時短勤務、ハイブリッドワークといった制度が整っていても、実際には「周囲に迷惑がかかるのでは」という不安感から利用をためらう社員も少なくありません。これは個人の問題ではなく、組織文化の問題といえます。
- 上司の理解不足
- 評価制度が旧来型のまま
- 成功事例の共有不足
こうした要因が重なることで、制度が形骸化してしまうリスクが高まります。
キャリア停滞感が生むモチベーション低下
時短勤務や在宅勤務を選択した社員が、重要プロジェクトから外されるケースも散見されます。これにより「成長機会の喪失感」が生まれ、長期的なキャリア展望を描けなくなるという指摘があります。
結果として、離職の意思決定が早まり、企業側は貴重な経験者を失う悪循環に陥ってしまいます。
多様な人材が活躍できる現場づくりの実践例
ここでは、実際に柔軟な働き方を現場レベルで実現している企業の取り組みを紹介します。制度を「作る」段階から「使われる」段階へと昇華させている点が共通しています。
A社の業務可視化によるチーム体制の再構築
A社では、育児中の社員が増えたことをきっかけに、業務の洗い出しと分解を実施しました。タスクを細分化し、誰でも引き継げる状態を整えたことで、急な欠勤にも柔軟に対応できる体制を構築しています。
| 業務フローの標準化 | 引き継ぎ時間の短縮 |
| 情報共有ツールの統一 | 在宅勤務でも業務継続が可能 |
B社の管理職研修による意識改革
B社では、管理職向けにライフステージ理解をテーマとした研修を実施しています。単なる制度説明ではなく、当事者の声を共有することで、現場視点でのマネジメント力を高めています。
育児中の部下に対する声かけの質が変わりました
小さく始める柔軟運用の定着プロセス
成功企業に共通しているのは、最初から完璧を目指さないことです。まずは一部部署でテスト運用し、現場の声を拾いながら改善を重ねていくアプローチが有効とされています。
制度は「作って終わり」ではなく「育てるもの」
ライフイベントと仕事を両立できる職場の未来像
ここまで紹介してきた内容を踏まえると、妊娠期や介護期の社員が安心して働ける環境づくりは、特別な施策ではなく、企業の競争力そのものに直結しているといえます。多様な働き方を受け入れる組織は、結果的にすべての社員にとって働きやすい職場となります。
制度、意識、業務設計の三位一体で改革を進めることが、持続可能な組織運営には不可欠となっています。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した具体的な考え方や働き方改革のポイントを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

