在宅勤務という働き方は、ここ数年で急速に広がり、特に子育て世代にとって大きな追い風となっています。しかし、実際には「制度はあるのに活用されない」「業務が属人化していて在宅が難しい」という課題も残っているとされています。管理職としては、従業員が安心して在宅勤務を使えるような職場改革を進め、離職防止とエンゲージメント向上の両立を図ることが重要です。
在宅勤務の導入は、従業員のライフステージに合わせた柔軟な働き方を実現するだけでなく、企業にとっても生産性向上や採用力強化に寄与するとされています。とはいえ、ただ制度を導入するだけでは成果は限定的で、運用ルールの明確化やメンバー間の心理的安全性の確保など、多面的な取り組みが不可欠です。本記事では、在宅勤務を活用した子育て支援施策のポイントや、企業が取り組むべき改革の流れについて内容を体系的にまとめております。
在宅勤務を阻む要因と企業が抱える課題の整理
在宅勤務を活用したい従業員が多い一方で、企業側には運用上のさまざまな壁が存在しています。制度そのものは整っていても、現場レベルでは「結局出社しないと回らない」という認識が残っているケースも少なくありません。ここでは、企業が直面する典型的な課題を整理し、なぜそれが起こるのかという根本原因まで掘り下げて解説します。
業務が属人化しており在宅勤務に切り替えられない
子育てと仕事を両立したい従業員にとって、柔軟な働き方が選べない最大の理由の一つが属人化です。担当者しか分からない業務が多いと、在宅勤務で業務を預けることが難しく、結果として制度が使いにくい状況が生まれます。この現象の背景には、マニュアル不足や業務の標準化が進んでいないといった構造的な課題があります。また、属人化は担当者の心理的負担を高め、「自分が休んだら迷惑をかけてしまう」という遠慮の気持ちにつながり、結果として制度の利用を妨げることにもつながります。
コミュニケーション不足による不安や孤立感
在宅勤務では対面機会が減ることで、チームとの一体感が薄れたり、情報が得にくく感じたりする従業員が一定数いるとされています。特に子育て中の従業員は勤務時間が限られがちで、会議に参加できないことで「取り残されている」と感じるケースもあります。この背景には、情報共有の仕組み不足や、社内文化として「口頭ベースの報連相」が根強く残っている点が関係しています。
成果評価の不透明さにより利用がためらわれる
在宅勤務では、成果の可視化やプロセス管理の方法が明確でない場合、「出社している人のほうが評価されやすい」と考える従業員もいます。これは業務量と成果を測る指標が曖昧なことが原因で、働き方よりも“見えている姿勢”が評価に影響してしまう環境があると、制度は形骸化してしまいます。また管理職自身も、在宅勤務中のメンバーの進捗把握に不安を抱えている場合があり、制度利用が進まない背景となります。
在宅勤務に必要なIT環境が不十分
リモートアクセス用のツールが整備されていない、デバイスが不足している、セキュリティ要件が厳しすぎて柔軟に作業できないなど、IT面のボトルネックもよくある課題です。子育て世代の従業員は、限られた時間で効率的に作業したいと考えるため、使いにくいシステムはストレスを生み、結果として制度の利用を遠ざける原因になります。
- 属人化が進行し業務引き継ぎが困難
- 対面文化が残り、情報共有が非効率
- 評価の曖昧さが制度利用の心理的ハードルに
- IT環境の不備が生産性低下を招く
企業が実践する在宅勤務改革の具体的アプローチ
企業が在宅勤務を成功させるためには、制度を整えるだけではなく、従業員が安心して活用できるような職場環境づくりが不可欠です。ここではA社・B社といった企業の取り組みを例に、効果的な改善施策を紹介します。どれもすぐに試せる内容であり、管理職として明日から着手できる改革ポイントをまとめています。
A社:業務の標準化とマニュアル化を徹底
A社では、在宅勤務を推進する上で課題となっていた業務の属人化を解消するため、業務プロセスの棚卸しから着手しました。各業務を小さなタスク単位に分解し、誰が見ても理解できるようマニュアル化。併せて業務フローを表形式で可視化する取り組みを行い、担当者以外でも業務を引き継げる体制を整えました。
| 顧客データ整理 | 〇(マニュアル化済) |
| 請求処理 | △(手順整備中) |
B社:オンラインコミュニケーションの整備
B社では、在宅勤務に伴うコミュニケーション不足を解消するため、定例ミーティングのルール化やチャット運用のガイドラインを作成しました。特に、時間帯や場所に縛られない「非同期コミュニケーション」を推奨することで、子育て世代の従業員でも参加しやすい環境づくりに成功しています。
「報連相がしやすくなり、相談のハードルが下がったと感じます」
評価制度の透明化と成果基準の明確化
企業によっては、在宅勤務に合わせて評価基準を「時間」から「成果」へと再定義する流れがあります。業務プロセスの見える化と組み合わせることで、管理職はメンバーの進捗を把握しやすくなり、従業員も安心して制度を活用できます。
ITインフラ支援とセキュリティ体制の強化
デバイス支給やリモートアクセス体制の整備は、在宅勤務の生産性を大きく左右します。必要なツールを全員が使える状態にし、使い方の研修まで提供することで、業務の効率化だけでなく従業員の不安軽減にもつながります。
在宅勤務に必要なITツール一覧のチェックリストを作成し、全従業員に共有することが効果的です。
在宅勤務を成功に導く企業改革のまとめ
在宅勤務は、子育て世代が働き続けられる職場づくりに欠かせない施策となっています。しかし制度だけでは機能せず、属人化の解消、コミュニケーションの仕組み整備、評価制度の透明化、IT環境の充実といった多角的な改善が求められています。これらの取り組みを進めることで、従業員の働きやすさが向上し、企業にとっても離職防止や生産性向上という大きなメリットが得られます。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した在宅勤務改革のポイントを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

