出産や育児を経て復職するタイミングは、多くの女性にとって大きな転機となります。特に職場の状況が変わっていたり、担当業務が不透明だったりすると、「ついていけるだろうか」という不安が強まり、復職のハードルを上げる要因になります。企業にとっても、優秀な人材の離職を防ぐことが課題となっており、復職前後のサポート体制の強化は避けて通れません。
その中で注目されているのが業務可視化による不安の軽減です。業務の全体像を明確にすることで、復職者は自分がどの役割を担い、どこから仕事を再開すれば良いのかが理解しやすくなります。また、上司や同僚も業務の抜け漏れに気づきやすくなり、チーム全体の生産性向上にもつながります。
復職支援は制度だけで解決できるものではありません。日々のコミュニケーションと、業務そのものの整理・共有が不可欠となっています。
本記事では、ママの復職支援として業務可視化をどのように活かすか、そのポイントと具体例をまとめております。
復職を妨げる課題とその根本原因を整理する
復職における企業側の課題は複数ありますが、とくに重要とされているのが「業務内容の不透明さ」と「心理的不安の蓄積」です。これらの課題は表面的には見えにくく、制度の整備だけでは解決しない場合があります。ここでは、それぞれの課題を深掘りし、企業としてどの点にアプローチすべきか整理していきます。
業務の属人化が復職後の負担を増やす
長期間の休職を経ると、担当していた業務は他のメンバーに割り振られたり、自然と変化していることもあります。しかし、業務が属人化していると「引き継ぎ資料がない」「どのツールで何を管理しているか分からない」といった問題が発生し、復職者は大きな負担を感じます。属人化が進む原因としては、日々の多忙さや情報管理の不統一などが挙げられます。
情報共有不足による心理的不安の増幅
復職者に限らず、情報が整理されていない組織では、業務の全体像を把握しづらくなります。その結果、復職者は「自分だけ状況がわかっていないのでは」という孤立感を覚え、エンゲージメントの低下につながる可能性があります。特に育児中は時短勤務などで時間的制約があるため、限られた時間で成果を出せるかどうかが不安要素になりやすいといわれています。
支援制度はあるのに活用されない理由
企業の中には、育休制度や時短勤務制度を整えているにもかかわらず、復職者がそれを十分に活用できていないケースがあります。これは制度の情報が十分に伝わっていなかったり、「周囲に迷惑をかけるのでは」という心理的ハードルが影響しているとされています。制度の有無だけでなく、職場全体がサポートする風土を育てることが不可欠です。
可視化不足が引き起こすチーム全体の問題
業務可視化は復職者のためだけではありません。業務がブラックボックス化していると、担当者が不在の時に仕事が滞り、チーム全体で非効率が生じます。管理職にとっても進捗が把握しづらく、適切なマネジメントが困難になります。そのため、復職支援と業務効率化は同時に進めるべきテーマといえます。
- 業務内容やツールが整理されていない
- 情報共有の仕組みが不十分
- 制度利用に対する心理的ハードルがある
- チーム全体で業務の依存度が高い部分が存在する
これらの課題を改善するには、まず業務の見える化を徹底し、誰でも理解しやすい形に整理することが重要となります。
企業が実践する業務可視化による復職支援
ここでは、実際に企業が進めている業務可視化の取り組みを紹介しながら、復職支援の成功ポイントをまとめていきます。A社とB社の事例を交え、どのような工夫が効果的であったのかを整理しています。
A社:業務棚卸しとマニュアル化の徹底
A社では復職者が発生する部署を中心に、業務棚卸しプロジェクトを実施しました。担当業務を細分化し、利用するツールや定期的に発生するタスクなどを記録することで、復職者がスムーズに状況を理解できるようになります。また、マニュアルを共有フォルダに保存し、誰でも参照できる状態を作りました。この取り組みは属人化の解消にも効果があったとされています。
B社:業務プロセスの可視化ツールを活用
B社では、フローチャート形式で業務の流れを可視化できるツールを導入しました。これにより、復職者は「どのタイミングで誰に確認する必要があるのか」「どの資料をどこに保存するのか」を直感的に理解できるようになり、不安の軽減につながりました。また、業務のボトルネックが見えるため、改善施策の立案にも役立ったといいます。
ミーティングやチャットでの情報共有を強化
業務可視化に加えて、日常のコミュニケーションを強化することで復職者の心理的不安を軽減することができます。週次ミーティングのアジェンダを共有したり、チャットツールで業務の小さな疑問を気軽に質問できる環境を整えることで、孤立感の軽減につながります。企業によっては、復職後数週間はメンターをつける取り組みも見られます。
業務可視化は復職支援だけでなく、組織全体の業務改善につながる重要な要素です。
どの取り組みでも共通しているのは、情報を整理し、誰でも理解できる状態にすることです。業務可視化はツール導入だけではなく、「共有する文化」の醸成が重要であると言えます。
復職支援の成功につながる業務可視化のまとめ
業務可視化は、復職者が安心して職場に戻るための基盤となる取り組みです。業務の属人化を防ぎ、復職者がスムーズにキャッチアップできる環境づくりは、企業にとっても大きなメリットがあります。業務棚卸しやマニュアル化、ツールを活用したプロセス整理など、取り組む方法は多岐にわたりますが、最も重要なのは継続して改善し続ける姿勢です。
また、業務可視化は復職者に限らず、誰にとっても働きやすい環境づくりを実現します。心理的安全性やエンゲージメントの向上にもつながり、組織の生産性全体を底上げする力を持ちます。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した業務可視化の取り組みを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

