妊娠期の社員が安心して働ける環境を整えることは、企業にとって重要な責任であり、同時に職場全体の生産性向上にもつながります。しかし実際には、「どこまで仕事を任せられるのか」「いつから業務制限を考えるべきか」「本人の希望と職場の事情をどう折り合わせるか」といった判断が難しいケースが多くあります。妊娠期は体調の変化が大きく、同じ“妊娠”でも人によって状態が大きく異なるため、上司や同僚が一般的なイメージだけで判断すると、無意識の負担や誤解を生んでしまうことがあります。
そこで重要になるのが、妊娠期における「できること・できないこと」を適切に整理する明確な基準づくりです。これにより、本人の負担軽減だけでなく、職場全体の業務計画も立てやすくなり、結果として離職防止やエンゲージメント向上にもつながっていきます。
本記事では、妊娠期の業務調整を進めるための視点や、企業が実際に取り組める整理方法についてまとめております。
妊娠期の業務調整に必要な視点と課題の整理
妊娠期の業務調整には、本人の体調や医師の指示に基づく「医学的な観点」と、職場の業務特性や負荷バランスを踏まえた「業務的な観点」の両方が欠かせません。しかし現場にはいくつかの課題が生じやすく、放置すると不公平感や業務停滞を招く可能性があります。
体調の個人差による判断の難しさ
つわりの重さや疲労度、気温による体調変化など、妊娠期の状態には大きな個人差があります。同じ「妊娠初期」でも働ける範囲は大きく異なるため、一般化した基準では適切に判断できないことがあります。
業務属人化による調整の困難さ
本人が担っている業務が高度に属人化している場合、急な体調不良や通院の増加により業務が滞る可能性があります。特に顧客対応や期限がシビアな業務では、周囲の負担も増えやすくなります。
コミュニケーション不足による誤解や遠慮
本人が「周囲に迷惑をかけたくない」と過度に努力してしまったり、上司側も「どこまで配慮すべきかわからない」と遠慮しすぎると、結果的に双方の負担が増える傾向があります。
業務調整のタイミングが遅れるリスク
明確なフレームがない場合、体調悪化が見えてから業務を減らすことになり、調整が後手に回ることがあります。これにより、本人はもちろん、チーム側の準備も間に合わなくなるケースがあります。
妊娠期における業務調整は「早めの整理」と「共有できる基準」が欠かせません。
企業が実践する「できること・できないこと」の整理方法
上記の課題を踏まえ、企業では妊娠期の業務を体系的に整理する仕組みづくりが必要となります。ここでは、実際に管理職がすぐ導入しやすい方法を紹介します。
妊娠期の業務区分を可視化するテンプレートの活用
まず行いたいのは、業務を負荷別に分類し、妊娠期の状態に応じて任せられるかを整理することです。以下は例として利用できる区分です。
| 継続して対応可能な業務 | 資料作成、オンラインで完結する業務など |
| 状況によって調整が必要な業務 | 外出を伴う業務、長時間の会議など |
| 代替が必要な業務 | 重量物の運搬、長距離移動が必須の業務など |
このような一覧をあらかじめ作成しておくことで、妊娠が判明した際にスムーズに業務調整の話し合いが進められます。また業務の可視化は属人化解消にもつながるため、組織全体の効率化にも資する取り組みとなります。
医師の指示内容を業務にどう反映するかのフローづくり
妊娠中は医師から「負担軽減が必要」「立ち仕事を控えるべき」などの指示が出る場合があります。しかし実際には、医師の言葉を職場ルールにどう落とし込むか迷うケースが多いとされています。
- 医師の指示の確認(本人 → 上司)
- 職場での受け止め方の検討(上司 → 管理部門)
- 具体的な業務変更の提案(上司 → 本人)
このプロセスをあらかじめ明文化しておくことで、上司側の負担が軽減され、判断も公平になります。
定期的な面談で変化を捉える仕組み
妊娠期は週単位で体調が変わる時期です。業務を一度決めて終わりではなく、定期的な面談を実施し、変化を吸収することが求められます。
「最近どう?負担が増えていない?」と上司側から声をかけるだけでも安心感が大きく変わります。
面談時には、業務負荷・体調・通院頻度・心理的不安の4点を確認項目として設定すると会話が安定します。
チーム全体でのサポート体制づくり
妊娠期の業務調整では、本人と上司だけでなく、チーム全体に理解を広げることが重要です。情報共有が不足していると、「なぜ業務が減っているのか分からない」「負担が偏っている気がする」といった不満が生じかねません。
業務の引き継ぎ範囲を明確にし、チーム全員が状況を把握できる環境をつくることで、協力体制が整い、心理的安全性が高まります。
まとめとして押さえておきたいポイント
妊娠期の業務調整は、個人差が大きい状況に柔軟に対応しながら、業務継続性を確保するという難しさがあります。しかし整理すべき視点は明確で、企業として取り入れやすい施策も多く存在しています。
まずは、業務の可視化、医師の指示を取り込むフロー整備、そして定期的なコミュニケーションの3つを軸にすることで、本人の不安は大幅に軽減されます。さらにチーム全体での共有を進めることで、負担の偏りを防ぎ、組織全体の働きやすさ向上にもつながっていきます。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した妊娠期の業務整理のフレームを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

