妊娠・出産を機に「この会社では続けられないかも」と不安を感じたことはありませんか。制度は整っていても、実際に使える雰囲気かどうかはまた別の話——そんなリアルな悩みを抱える女性は、今も少なくありません。 創業100年以上の歴史を持ち、住宅基礎用ポリマーセメントを全国へ展開する株式会社竹屋化学研究所では、男性社員が多い製造業でありながら、パートや時短勤務からの正社員転換、個人の事情に合わせた就業規則の見直しなど、一人ひとりの働き方に向き合う取り組みを続けています。今回は取締役副社長の竹谷さんに、女性が長く働き続けるための環境づくりや、これからの展望について伺いました。
登場人物
わたしリズムWebマガジン編集部 徳林 「リアル3拠点生活」を実践中のわたしリズムWebマガジン編集部員。 株式会社竹屋化学研究所 竹谷さん 取締役副社長。全国約440社にポリマーセメント製品を提供し、国際規格に基づく製品の安全確保や、社員が快適に働ける環境づくりに取り組む。
目次
「そろそろ正社員はどうですか」——パートから始まる、長く働き続けるための関係
徳林
パートや時短勤務から正社員になられた方がいると伺いました。どのような流れだったのでしょうか。
竹谷さん
もともと時間が短めで働ける形での募集に来てくださった方が、何年も続けていてくださるうちに、「そろそろ正社員はどうですか」とこちらからお声がけした形でした。 ただ、ご本人は「上の子が小学校に行くまでは今のままがいい」とおっしゃっていて、正社員になることで休みが取りにくくなることを心配されていた部分もあったようです。最終的にはお子さんが落ち着いてから正社員に移られた方が多かったですね。パートから正社員へのキャリアパスは、うちでは自然な流れとして定着してきました。
徳林
一人ひとりの事情に合わせて就業規則を変えることへの抵抗はないんですか?
竹谷さん
そうですね、実際に「3歳まで」を、「小学校就学まで対応可能」と社内規定を書き直したこともあります。滋賀工場の男性社員から、幼稚園の送り迎えがあるので出勤を30分後ろにずらしたいという相談があって、それに合わせて規定を整えた形でした。 もちろん、言われたことをすべてそのままにできるわけではないのですが、どこに落としどころを作るかを一緒に相談しながら決めていくというスタンスは大切にしています。要望があってから考えるのではなく、あらかじめ調整できる準備をしておく、という感覚です。
「見通しが立つから、いくらでも備えられる」——BCPの視点で進める、誰もが休める体制づくり
徳林
育休・産休への対応と、業務が回らなくなる懸念のバランスはどのようにお考えですか。
竹谷さん
実はこれ、どちらかというとBCP(事業継続計画)の感覚でやっているんです。「この人がいないと業務が止まる」という状態を作らないように、属人化しないための準備を全社的に共有して進めています。
特定の一人に頼り切らず、情報や業務を分散させておくこと。それが結果として、ライフイベントによる長期の休暇にも柔軟に対応できる強さにつながっています。「この子がいないと困る」状況は、会社としては防がなくてはならないという認識をみんなで持っています。
徳林
お休みに入る方を、業務の穴埋めというネガティブな視点だけで捉えていないのですね。
竹谷さん
うちは原材料にナフサを使うものが多いので、世界情勢で荷物が入らなくなるとか、コロナ禍のように急に供給が止まる方がよっぽど予測できなくて大変です。それに比べたら、妊娠や出産に伴うお休みは「いつ頃から」という見通しがしっかり立ちます。
見通しが立つからこそ、あらかじめ準備ができる。あらかじめ分かっていれば、会社としても体制を整える時間が十分にあります。そう考えると、慌てる必要はまったくなく、むしろ前向きに捉えて準備ができるありがたい機会だと感じています。
気づいたら全員が管理職以上。製造業に広がってきた、女性の「発言できる場」
徳林
公式サイトで女性比率の高さを拝見して驚いたのですが、管理職の状況はどうでしょうか。
竹谷さん
気づいたら、女性社員はほぼ全員が係長職以上になっていました。今年30歳になった社員も、今年から課長になっています。意図して「女性を管理職に」と進めたというより、結果的にそうなった形です。 しっかりしてくださる方が多いのは間違いないのですが、役職手当をつけることで実態にあった評価ができているかどうかは、また別の問題だとも思っています。ただ、発言の場は確実に広がってきていると感じています。
徳林
職場の雰囲気が変わってきたのはいつ頃からですか?
竹谷さん
ここ10年くらいで変わってきた印象です。以前、工場を大阪から滋賀に移転したタイミングがあって、その際についてこられなかった社員もいました。そこで新たに20〜30代の方を採用したことで、男性社員の年齢層が若返ったんです。 女性社員はそのころからほぼメンバーが変わらず、9年目・5年目といった長く在籍してくださっている方が多い。自然と経験が積み上がって、今の状況につながってきた感じがします。今は30代の女性が5〜6名いて、子育て世代の可能性が十分ある年代ですから、これからが本番だと思っています。
「家族が工場見学に来れる会社に」——竹谷さんが描く、5年後のビジョン
徳林
これから、会社として目指したい姿やビジョンがあれば教えてください。
竹谷さん
ふわっとしたイメージではあるのですが、社員のご家族が工場見学に来られるような会社になれたら楽しいだろうなと思っています。授業参観の逆版みたいな感覚で、「パパはこんな環境で働いてるんだよ」「ママはこんな仕事してるんだよ」が伝えられる場所があると、社員本人も自分の働き方に納得感を持てるんじゃないかなと。 強制ではなく、「試しにやってみようか」と気軽に声をかけ合えるようなコミュニケーションが取れていること。そういうウェルビーイングな空気が、働き続けたいと思える職場につながると思っています。
徳林
女性の妊娠・出産に備えた制度の準備は、現在どのような段階ですか?
竹谷さん
制度は法律に沿って整えているところで、ベビーシッターや保育施設への手当についても、必要になったときすぐ動けるよう情報を集めている段階です。正直なところ、まだ女性社員が長期の育休を取った実績がないので、いざとなったら「準備できていなかった」と気づくことも出てくるかもしれません。 それでも、「辞めずに済む環境にしたいから、相談しよう」というスタンスは社内で揃っています。子育て中の20〜30代の社員には「やめんといて、一緒にすり合わせるから」と伝えていますし、戻ってきてほしいという気持ちは全面的に伝えた上で、条件を一緒に考えていきたいと思っています。
編集部 徳林のまとめ
今回のインタビューで印象的だったのは、「見通しが立つからこそ、あらかじめ準備ができる」という竹谷さんの言葉でした。育休・産休を単に“特別な配慮”として捉えるのではない。BCP(事業継続計画)の一環として、普段から「誰が抜けても業務が回る体制」を整えておく。その視点の切り替えが、誰もが安心して休める職場の土台になっていると感じました。 パートから正社員へ、時短から管理職へ。正解の形は一つではなく、一人ひとりの事情に合わせて就業規則ごと柔軟に変えていく姿勢は、働く側に大きな安心感を与えてくれます。まだ「実績はこれから」というリアルな試行錯誤も含め、誠実に社員と向き合おうとしている姿が深く心に残るお話でした。 あなたの職場は、「お互いさま」と言い合える雰囲気がありますか?
取材した企業について
| 企業名 | 株式会社竹屋化学研究所 |
|---|---|
| 事業内容 | 住宅基礎保護用ポリマーセメント・タイル圧着用ポリマーセメント・特殊下地用ポリマーセメント・防水材・その他左官用関連製品の製造・販売 |
| 所在地 | 〒577-0056 大阪府東大阪市長堂2丁目3番21号 布施駅前ビル4階 |
| サイトURL | https://www.takeyakagaku.com/index.php |
※ 本記事の内容は、2026年4月21日取材当時のものです。

