育児と仕事を両立する「ワーキングマザー(ワーママ)」の離職は、多くの企業にとって避けたい課題となっています。とくに、復職後の業務量の調整不足や、キャリア継続の見通しが描きづらい環境が続くと、優秀な人材ほど離職を選択せざるを得ない状況が生まれてしまいます。企業としては、その前に適切な対策を講じることが不可欠です。
ワーママの多くは「働きたい意欲がある」にもかかわらず、制度と実態のギャップや、心理的な負担、チーム体制の属人化などの理由から、働き続けることが難しくなると指摘されています。このギャップを埋めるためには、管理職が主体となり、働きやすい体制づくりを進めることが求められます。
また、ワーママの離職は企業にとって大きな機会損失につながります。経験豊富な社員の退職は、スキルの喪失だけでなく、新規採用や育成にかかるコストの増加という形で企業の負担になるためです。だからこそ、今、組織全体で「働き続けたい」と感じられる環境を整備することが重要性を増しています。
そのためには、ワーママの働きやすさを高める施策を戦略的に設計する必要があります。
本記事では、ワーママの離職を防ぐための要点を整理し、企業がすぐに取り入れられる具体策を幅広くまとめております。
ワーママ離職の背景にある課題を的確に把握する
ワーママの離職には複数の要因が絡み合っています。個人の努力だけでは解決できない構造的な課題も多く、企業としての理解と対策が欠かせません。この章では、離職につながりやすい主な問題と、その根本原因を整理します。
業務量の調整不足による過度な負担
復職後も妊娠前と同じ業務量を維持してしまうケースは少なくありません。残業前提のタスク配置や突発業務が頻繁に発生すると、育児と仕事の両立が難しくなります。また、属人化した仕事を抱えている場合、チーム全体でフォローできず、本人の負担が増えてしまうことが要因として挙げられます。
キャリアの停滞感や成長機会の不足
育児中の社員は、業務内容を制限されることで「キャリアが止まってしまう」という不安を感じることが多いとされています。業務の線引きが曖昧なままだと「負担軽減=成長機会の喪失」と受け止められ、エンゲージメントの低下につながります。
成長機会の不足は心理的負担となり、離職理由として最も多い要因のひとつだとされています。
管理職の理解不足によるコミュニケーションのすれ違い
育児と仕事の両立を支える上で、管理職の理解は欠かせません。ところが実際には、働き方の柔軟性や配慮のポイントが共有されておらず、支援が個人の裁量に任されているケースが目立ちます。理解が不足すると、本人は「申し訳なさ」を感じ、遠慮から問題を言い出せない悪循環が生まれます。
在宅勤務やハイブリッドワークの活用不足
リモートワークは育児との相性が良いとされていますが、業務管理や評価制度が追いつかず、導入が限定的なケースもあります。適切な運用ルールが整備されていないと、公平性への不満や、コミュニケーション不足による孤立感を生む要因にもなります。
組織全体に必要な課題の整理
| 業務量の過多 | 属人化・配置の固定化 |
| キャリア停滞 | 成長機会の限定化 |
| 両立ストレス | 管理職の理解不足 |
| 働き方の制約 | 制度と運用のギャップ |
これらの課題を的確に把握することで、効果的な改善策を検討しやすくなります。
働き続けたくなる職場へ導く具体的な取り組み
ここからは、企業が実際に取り組んで効果を得ている施策を紹介します。業務量の最適化からキャリア支援まで、すぐに着手できる内容を中心にまとめています。
業務の可視化とチーム単位での再設計
まず取り組むべきは、業務の属人化を解消し、チーム全体でカバーできる仕組みづくりです。A社では、タスク管理ツールを活用して業務を可視化し、負荷が偏らないよう定期的に調整する運用を取り入れた結果、ワーママだけでなくチーム全体の残業時間の減少につながりました。
- 業務棚卸しとプロセスの共有化
- 複数名での対応可能な仕組みづくり
- 突発業務を個人に依存しない体制整備
業務の透明性が高まることで、心理的な負担も大幅に軽減されます。
柔軟な働き方とハイブリッドワークの最適化
企業B社では、在宅勤務の選択制や時差勤務の導入と同時に、評価制度を「成果ベース」に見直すことで、働き方への不公平感を抑えることに成功しました。リモートワークの質を上げるために、定例ミーティングの短縮や資料共有ルールの見直しも併せて実施されています。
「在宅勤務が使いやすくなり、育児のストレスが減った」と社員からの声も多く、定着率も向上したと言われています。
キャリア継続を支える育成・学びの機会提供
キャリア停滞の不安を解消するためには「長期的に成長できる職場である」と感じてもらうことが重要です。たとえば、オンライン研修の活用やスキルアップ面談の定期化などは、コストを抑えながら実行しやすい施策だとされています。
成長機会の提供は、離職防止に大きく寄与するポイントです。
管理職への両立支援研修の実施
管理職の理解は、ワーママ支援の質を左右する重要な要素です。最近では、両立支援に関する社内トレーニングを導入する企業も増えています。具体的には、配慮のポイント、適切なコミュニケーション、業務調整の手順などを整理し、誰でも同じ基準で対応できるようにする取り組みです。
個々の裁量に依存しない仕組みづくりが、安心して相談できる環境につながります。
離職防止につながる職場づくりのポイント
ワーママが働き続けられる職場づくりには、業務体制、働き方、キャリア支援、マネジメントの4つの要素が連動する必要があります。それぞれをバランスよく整えることで、企業全体の定着率向上にも寄与します。
- 業務量の調整と属人化の解消
- 柔軟に働ける制度と運用の一致
- キャリアが継続できる環境設計
- 管理職の理解とスキル向上
これらの取り組みは、すぐにすべてを実行する必要はありません。しかし、ひとつずつ積み重ねていくことで、確実に「働き続けたい」と思える職場に近づきます。
そのためにも、ぜひ、本記事で解説した取り組みを実践ください。
(執筆・編集:エムダブ編集部)

